「覆水盆に返らず」取り返しのつかないことを想定する!
故事成語に「覆水盆に返らず」という言葉があります。
簡単に言うと、「一度してしまったことはもう取り返しがつかない」ということです。
過去の失敗を悔やんでもしょうがありませんが、やはり取り返しのつかないことをして後悔することは、できれば避けたいものです。
「覆水盆に返らず」の意味や語源
「覆水盆に返らず」という意味は「一度してしまったことは取り返しがつかない」と書きましたが、具体的にどのような意味(由来)なのかを見ていきましょう。
まず読み方は、「覆水盆に返らず」「ふくすいぼんにかえらず」です。
「覆水」の読みは「ふくすい」です。
そして、「覆水」の意味は「入れ物からこぼれた水」という意味です。
この「覆水盆に返らず」の話の語源は以下のような感じです。
昔、周(しゅう)という国に呂尚(りょしょう)という男性と、馬氏(ばし)という女性の夫婦がいました。
夫である呂尚(りょしょう)は、毎日働かずに読書ばかりしていて、妻である馬氏(ばし)はそんな夫に愛想を尽かし、夫婦は離婚をしました。
やがて、呂尚(りょしょう)は周の国の王に見いだされ、太公望と呼ばれ、周の軍師(後の斉(さい)の始祖)という大出世を成しました。
それを知った妻の馬氏(ばし)は、呂尚(りょしょう)に復縁を迫りました。
そんな妻に呂尚(りょしょう)は、お盆の水をこぼしながらこう言いました。
「このお盆のこぼした水を元に戻せたなら復縁しよう」
お盆からこぼした水は元には戻せず、結局復縁は出来なかった。
こんなお話しです。
まぁこの話だけを聞くと、
「いやいや、後に出世したとしてもきちんと働けよ!」
「王に見いだされなかったらどうすんじゃい!」
「愛想つかれるのは当たり前!」
「奥さんがかわいそう・・」
なんて言葉が今の世の中では聞こえてきそうです。
しかし、この「覆水盆に返らず」という内容は、別に夫婦仲のどちらに問題があるか?などというお話ではないのであしからず。
この話で言いたいことは、「後悔先に立たず」であり、「人間万事塞翁が馬」でもあります。
「「人間万事塞翁が馬」 結果ばかりを気にせず自分の信念をつらぬく。」
取り返しのつかないことを想定しているか?
さて、「覆水盆に返らず」(ふくすいぼんにかえらず)の教訓というか、意味するところは、「世の中には取り返しがつかないことがある」ということであり、だからこそ「取り返しのつかないことを想定する」ということが大切であるということです。
いくつか例をとって書いてみます。
「覆水盆に返らず」夫婦間の離婚による後悔
「覆水盆に返らず」の由来の話でもちょうど出てきましたが、夫婦の離婚などもよくある「取り返しのつかない」ことではあります。
昨今は離婚をする夫婦がとても多い時代になっています。
日本の離婚率は今や3組に1組の割合だと言われており、離婚への敷居が低くなり簡単に離婚出来る時代とも言えます。
ほんと多いんですよね離婚。
別に必ずしも離婚が悪いとか言うつもりはありません。
離婚に至った経緯は各夫婦や家庭毎にいろいろ事情があるはずですし、離婚して正解だった、離婚してやっと幸せになれた、という夫婦や家庭も世の中にはたくさんあるかと思います。
私の周りにも離婚している人たちはわんさかいますよ。
親戚、会社の同僚、子供の同級生の親、知り合いの知り合いなど。
ただその一方で、簡単に離婚をしてしまい、そして後悔してしまう人もこれまたたくさんいると言われています。
「嫌な元旦那よりシングルマザーの方が大変だった・・」
「離婚して初めて元妻のありがたみに気づいた」
「浮気相手と一緒になんてなるんじゃなかった」
「もう一度あの頃の一家団らんに戻りたい!」
「ちょっと魔が差しただけなの!」
「本気じゃなかった!」
「本当に愛しているのはあなただって気づいたの!」
などというような、相手の他責などによるDVや借金などは別にして、ある意味自業自得のような離婚をした場合などに多い後悔です。
夫婦って一生を共にすると誓って結婚したとしても、やはり性格の不一致であったり、価値観の違いなども出てきて、それはそれは色々あります。
しかし、それでも離婚をした後の自分の人生は「一体どうなるのか?」「どんなパターンが起こり得るのか?」などといった想定は絶対に必要です。
子供が居ればなおさらです。
離婚などをする場合は、どの夫婦もお互い冷静でない状況であることでしょうけど、だからこそ一歩下がって少しでも冷静な状態で決断をする必要があります。
一度壊れた夫婦仲や家族は、そう簡単には元には戻れません。
なぜならそれは自分自身だけの問題ではないからです。
相手の心境も当然あるし、子供が居ればなおさら様々な問題が出てきます。
お互いの信頼関係の再構築は決して容易ではありませんよね。
それでもそんな中でも「覆水盆に返らず」という取り返しのつかない事柄も、頭の片隅には置いておくべきだと思います。
私も離婚を考えたことはこれまでに何回もあります。
(浮気とかは一切ありませんよ)
理屈ではわかっていても感情がついていかないことはよくありますから、これが簡単なことではないのはわかります。
しかし「覆水盆に返らず」これを想定して思いっきり悩むと、やはり簡単に離婚などは出来ません。
必ず後悔する自分が頭に浮かぶからです。
誤解のないように言っておきますが、それでも「離婚して良かった」「離婚して苦労しているけど、子供のことも考えてこれで良かったんだ」という「離婚=正しい選択」というのもたくさんあるはずです。
「覆水盆に返らず」会社を辞める。転職する。
離婚も人生の転機なら、会社を辞めたり転職したりするのも、これまた人生の転機であったりします。
今の世の中は、今の社会情勢は、いまさら言うまでもありませんが、終身雇用や安定企業などといった会社はめっぽう少なくなりました。
というよりそういう時代なのでしょうね。
しかし、そうはいっても企業は企業で、終身雇用・年功序列などの名残りにより、低賃金などで社員を雇い、しかし昇給や賞与はままならないなどいった、やむを得ない部分はあれど、社員にとっては不満と不安が募る世の中になっています。
一昔前の社会情勢とは異なり、一つの会社に長く勤めればそれだけ給料が上がるわけでもなく、また終身雇用として守ってもらえるわけでもありません。
そして、仕事は忙しく、給料は上がらない、そんな企業が増えてくると、
「このままこの会社に居ていいのか?」
「もっと別のしっかりした会社に転職すべきでは?」
「どうせここに居ても将来は見込めない」
「給料は上がらないし仕事は辛いし、辞めたい」
「自分に合った仕事は他にきっとあるのではないか?」
このような不安が日々襲い掛かってくるものです。
結婚して家族を養っていく身であったり、ローンを組んで家を購入した人などは、更なる不安とプレッシャーを感じているかもしれません。
しかし、今や会社を辞めたり転職したりするのも、失敗や後悔を感じる人は後を絶たないと言われています。
これは人それぞれケースバイケースであり、隣の芝は何とやらと言った要素も多々ありますが、やはり安易に退職や転職を決断すべきではありません。
もちろん若い人とそうでない人や、結婚している人や子供が居る人などと、その人の環境によりけりですけどね。
転職などよく言われているのが、「ネガティブな動機で会社を辞めるな」ということです。
今の会社に居たくない、今の仕事を続けたくない、今の人間関係に耐えられない、そんな逃げの要因で(本人からしたらそんなことないかもですが)、会社を辞めたとしても、次も同じことを繰り返す可能性があるということです。
やりたいことが見つかったり、より良い環境に移るという転職はいいかと思いますが、残念ながらよっぽど悪い環境でない限り、辛いことや大変なことはどの会社に行っても同じであるということが多いのです。
「給料は増えたけど仕事の量も増えて休みがない・・」
「やっぱり前の会社に頑張って残っていればよかった・・」
「騙された!もっと良い待遇だって聞いたのに!」
「前の会社よりももっと嫌な人が居た」
「前の会社の方がまだまだ仕事が楽だった・・」
「家族のために転職したのに家族が崩壊してきた・・」
何も一つの会社に居続けることが大切というわけではありません。
さまざまな職場を経験して、初めて自分のやりたいことや自分に合った職に就くことも出来ますし、何より良いことも悪いことも経験が自分を成長させてくれます。
しかしこれも先ほどの離婚と同じ話で、要は今の会社を辞めた後のパターンの想定が大切だということです。
そういう想定をしない、もしくはあまい想定であれば、失敗というより後悔する確率がそれだけ高くなります。
こんなはずじゃなかったと・・
辞めなければよかったと・・
「覆水盆に返らず」人生の転機となる物事には慎重に
このように人生の転機の一つとして、離婚や転職などを例にとって書きました。
「覆水盆に返らず」(ふくすいぼんにかえらず)という故事は、取り返しのつかないことについての教訓です。
取り返しのつかないことというのは、人生の転機の部分となることが大半でしょう。
それ以外は意外と取り返しがついたりするものです。
その人の考えようですけどね。
人生の転機といえば、学生の進学もそうですし、就職、転職、結婚、離婚、出産、家の購入などお金の問題などですかね。
そういった場面による際の決断には、「覆水盆に返らず」という考慮が必要です。
それは「取り返しのつかないことをするな」というよりは、「取り返しがつかなくなるからきっちり想定して決断しよう」ということになります。
そのような想定をしていれば、たとえ失敗して取り返しがつかないことが起きても、「しょうがない」「あの時はあの決断しかなかった」と思えるものです。
とはいってもそう簡単にいかないのが人生なんでしょうけど・・
しかし失敗も後悔もできるだけしたくいないものですよね。